再生医療用細胞の安全性を培養液で検査可能に
―残存する未分化iPS細胞を検出する新技術を開発
:産業技術総合研究所/和光純薬工業

 (独)産業技術総合研究所は2月17日、再生医療用の移植用細胞に残存する未分化なiPS細胞(人工多能性幹細胞)などを簡便に検出できる技術を和光純薬工業(株)と共同で開発したと発表した。移植用細胞の安全性を細胞培養液によってチェックできるのが特徴で、これまでのように検査のため移植用細胞の一部を壊す必要がない。再生医療の促進や安全性向上に役立つという。

 

■特徴的な糖タンパク質を手がかりに

 

 様々な細胞に分化する能力を持つヒトiPS細胞やヒトES細胞(胚性幹細胞)を用いる再生医療では、これらの細胞を分化させて得られる移植用細胞を用いる。この移植用細胞には未分化のヒトiPS細胞やES細胞が残存する場合があり、これらが腫瘍化する危険性があることから、この解決が課題の一つになっている。
 未分化細胞の残存状態については現在、移植用細胞の一部を破壊して検査せざるを得ず、せっかく作った貴重な細胞の一部を失っている。
 研究チームは今回、ヒトiPS細胞やヒトES細胞から「H3+ポドカリキシン」という糖タンパク質が培養液中に分泌されていることを発見した。この糖タンパク質はヒトiPS細胞やヒトES細胞に特徴的な物質で、通常の体細胞からは分泌されていないことも分かった。
 培養液中のH3+ポドカリキシンを調べればiPS細胞などの残存をチェックできるため、研究チームはH3+ポドカリキシンの検出システムも開発した。
 実験の結果、多数の検体を迅速に高感度に検出できることを確認できたという。このシステムを用いると移植用細胞中のヒトiPS細胞・ヒトES細胞の混入率を測定できることから、再生医療の安全性評価法として期待できるとしている。

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従来法と新開発の方法による検査法の違い(提供:産業技術総合研究所)