
南海トラフ三連動地震の想定される平均レベルの加振の3.8倍で最終的に崩壊した試験体(防護フレームに寄りかかっている)(提供:防災科学技術研究所)
(独)防災科学技術研究所は2月25日、京都大学、鹿島建設(株)などと共同で18階建て鉄骨造りの高層ビルを模擬した高さ25m超の試験体を倒れるまで揺らす世界最大規模の振動台実験の実施結果を発表した。1980~90年頃に建てられた標準的な鉄骨造りの高層ビルは、三大都市圏で想定される南海トラフ地震の揺れを受けても構造の損傷はほぼ継続使用可能な状態にとどまり、想定される最大級の南海トラフ地震を超えるレベルに対しても、倒壊までには十分な余裕があることが確認されたという。
■「Eディフェンス」で挙動検証
この実験は「E-ディフェンス(実大三次元震動破壊実験施設)」振動実験と呼ばれ、防災科学技術研究所をはじめ京都大学、鹿島建設のほか、(株)小堀鐸二研究所、(株)大林組、清水建設(株)、大成建設(株)、(株)竹中工務店など民間6社を含む計8機関が参加し、昨年12月9日から3日間、防災研の兵庫耐震工学研究センターで実施された。
振動台上に設置した試験体は実物の3分の1大の鉄骨造り18層の構造物で、重さは420t。この試験体に南海地震、東南海地震、東海地震が同時に起きた場合の「南海トラフ三連動地震動」の波を加振した。
実験では、想定される三連動の平均レベルを基準として、平均レベル、三連動最大級レベル(平均レベルの1.64倍)、平均レベルの2倍、同2.3倍……と徐々に加振のレベルを大きくし、最終的に崩壊するまで加振して余裕度データなどを取得した。
これまでの解析によると、1980~90年頃に設計・施工された標準的な形式の鉄骨造り高層ビルは、平均レベルの南海トラフ地震に対して、構造の損傷はほぼ継続使用可能状態に留まること。想定される最大級の地震を超える平均レベル2倍の揺れでは、2~3階の梁端に破断は生じるものの、倒壊までには十分な余裕があること、などが明らかになった。
平均レベルの3.1倍の地震では梁や柱の損傷が進行して1~5階が大きく変形、安全性の限界に近い状態になるが、完全に崩壊したのは平均レベルの3.8倍の地震であった。
今回の実験では建物の全体や各層レベルの損傷を把握するためのセンサーと、部材接合部の損傷を把握するセンサーなどから成るモニタリングシステムを開発して設置、倒壊までの各種のデータを取得できたという。これらの知見は今後の超高層ビルの設計や安全性評価に役立つとしている。26年度中にはRC(鉄筋コンクリート)造りの建物の実験を行う予定という。