全球降水観測衛星計画の主衛星の打ち上げに成功
―世界の雨や雪を精密に観測、温暖化・災害対策などに活用へ
:宇宙航空研究開発機構/三菱重工業

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全球降水観測衛星計画の主衛星などを載せて打ち上げられたH-ⅡAロケット23号機(提供:JAXA)

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(株)は2 月28日、国際プロジェクト全球降水観測(GPM)計画の主衛星を種子島宇宙センター(鹿児島)からH-ⅡAロケット23号機で同日午前3時37分に打ち上げ、予定の軌道に乗せるのに成功したと発表した。今後、GPM計画で得られるデータは地球温暖化の研究、大型台風や豪雨の災害対策から天気予報まで、広い分野での活用が期待される。

 

■相乗りの小型衛星なども軌道に

 

 GPM計画は、JAXAと米航空宇宙局(NASA)が2004年来進めている国際共同観測計画で、主衛星と約10個の副衛星を使って地球全体の降水(雨や雪)を1日数回、これまで以上に正確、精密に観測しようというのが狙いである。今回打ち上げの主衛星は、副衛星群による雨水観測の基準となり、観測精度を高める中心的役割を担う。副衛星打ち上げについては、日米のほかに、欧州、インド・フランス連合が、それぞれ打ち上げを発表している。
 GPM計画主衛星は日米が共同で開発した衛星で、重さは3.75t。JAXAが情報通信研究機構と開発した「二周波降水レーダー(DPR)」とNASAが開発した「GPMマイクロ波放射計(GMI)」を搭載している。DPRでは周波数の異なる降水レーダー2台で同時観測することで、熱帯の強い雨から高緯度地域の弱い降雪まで、降水量を精密に観測でき、雨粒の大きさも推定できる。また、DPRは雨雲を立体的に捉えられるので「雨雲スキャンレーダ」とも呼ばれている。
 GMIでは、13の異なる周波数で降水分布など観測、DPRとの同時観測により降水や降雪の推定精度が向上する。今後、機器類のチェックなど行った後、打ち上げ約2カ月後から定常的な降水観測を始め、主衛星の観測データの精度確認した後、秋からは、ほぼリアルタイムで様々なシステムを通じて世界の利用者にデータが提供される。JAXAも地球全体の降水分布マップを作成、インターネットで公開する計画を進めている。
 B型も含むH-Ⅱロケット全体として、今回の打ち上げ成功で27機打ち上げて26機が成功となり、打ち上げ成功率は96.3%になった。
 なお、このH-ⅡAロケット23号機にはGMP計画主衛星の他に公募で選ばれた8大学(信州大、香川大、帝京大、鹿児島大、多摩美大・東大、大阪府大、筑波大)の学生らが開発・作製した20~30kgほどの小型衛星3機と1kgほどの超小型衛星4機が相乗りしており、いずれも軌道に乗った。

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