(独)国立環境研究所と(独)海洋研究開発機構は2月25日、過去1万2,000年の北太平洋における中・深層水循環の変動を有孔虫化石の年代測定結果に基づいて解析、中・深層水循環変動の実態解明に成功したと発表した。それによると、7,500~6,000年前に南半球の気候変動が引き金になって北太平洋の中・深層水循環が強化されたことなどが分かったという。
■下北半島沖の有孔虫化石の年代測定から
海洋深層水は、大量の熱を蓄熱して熱帯から高緯度へと熱を輸送するとともに、大量の二酸化炭素(CO2)を蓄積する機能も持ち、その循環は、地球気候のコントロールに重要な役割を果たしているとされている。しかし、深層水循環と気候変動の関連性については、まだほとんど解明されていない。
研究チームは、海洋研究開発機構の地球深部調査船「ちきゅう」が2005年に下北半島沖の水深1,179mで採取した海底堆積物コアを試料に用い、このコアを厚さ1-2cmに切り、堆積物中に保存されている浮遊性有孔虫と底生有孔虫の化石をとり出して有孔虫化石の放射性炭素年代測定を行い、当時の中・深層水の年代を試算。その結果を用いて北太平洋中・深層水循環変動を復元した。
それによると、過去1万2,000年間に中・深層水循環に大きな変動が認められ、特に7,500~6,000年までの期間のうちの数百年の期間に中・深層水循環が大きく変動、強化されていが分かった。その原因については、南半球における偏西風帯が南へ移動したことが引き金になり、南極地域の気温が上昇して南大洋の水温が上昇、南大洋における深層水(南極深層水)の形成が活発になったことが考えられるという。
一方、グリーンランド沖に端を発する北太平洋深層水の形成がこの時期、活発になっており、南北両半球における深層水形成が同調していた可能性が認められたという。
南北両半球高緯度地域で温暖化と寒冷化が逆になる現象をバイポーラ・シーソーといい、深層水循環の変動が関係しているとされているが、今回の結果は、それとは異なる新たなメカニズムの存在の可能性を示しているという。