
損傷のない2.2G耐震天井(仙台波100%:震度6強後)(提供:防災科学技術研究所)
(独)防災科学技術研究所は3月31日、4月施行の新耐震技術基準に従って体育館などの大規模空間に設置された吊り天井が2011年の東日本大震災の揺れにも耐えることを実大三次元震動破壊実験施設(E‐ディフェンス)による模擬実験で確認したと発表した。今後、得られたデータを詳細に分析して、より安全な耐震天井の開発につなげていく。
■仙台市と神戸市の揺れを再現
東日本大震災では学校の体育館やホールなどの吊り天井が脱落する被害が発生。これを受けて今年4月から天井脱落防止のための新技術基準が義務づけられた。今回の実験は、この新基準に基づいて設置された吊り天井の揺れ具合や耐震性を実大モデルで検証する狙いで実施、実験結果の速報を発表したもの。
実験では、小中学校の体育館を模擬した実物大の試験体として新技術基準に基づいて設計した2種類の吊り天井を用いた。1つは一般に広く流通しているJIS規格材を主に用いたもの(1.1G耐震天井)で、もう1つはJIS規格材より高強度の部材を使った(2.2G耐震天井)実物大の吊り天井。
これら2つの試験体をそれぞれE‐ディフェンスの大型震動台に設置、地震時の揺れを再現して耐震性を調べた。揺れの波形としては、東日本大震災時に仙台市に設置された地震計で記録された地震動と、1995年の阪神淡路大震災の際に神戸市で観測された直下型地震による地震動波形を再現した。
震度6強に相当する仙台市の波形では、JIS規格材を用いた試験体は天井面の揺れを抑えるための斜め部材が曲がり始めたが、危険な状態には至らなかった。また、より高強度の部材を用いた試験体も眼で確認できる被害は発生せず、同研究所は「新耐震基準を満たした天井では脱落に至る被害は起きないであろう」と結論付けた。
この後、直下型地震への耐震性能を評価するため、さらに続けて同じ試験体を神戸の波形で震動させたが、JIS規格材の試験体では天井ボードなどが脱落、高強度部材の試験体でも斜め部材の取り付け部が数点外れた。
これらの実験結果について、同研究所は「耐震天井は設計想定の2倍以上の地震の揺れにも耐えられるだけの余裕度を持っていることが明らかにできた」といっている。