
上は、広帯域スクィーズド光源、下は、超伝導転移端センサー(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所と(独)情報通信研究機構は3月18日、上智大学、学習院大学と共同で次世代の革新的な通信技術とされる量子通信の実現に欠かせない新技術を開発したと発表した。レーザー光よりも雑音を小さくできる光「スクィーズド光」を光ファイバーが使える波長域で出せる新しい光源と、その光を高感度で検出する技術の開発に成功、大容量の量子通信技術の実現に道を開いた。
■波長を10倍以上に広帯域化
レーザー光は光の波と山の位置関係(位相)がそろった光だが、量子力学によると原理的に波の振幅の揺らぎを一定以下にすることはできない。これに対し、スクィーズド光は波の特定の位相の部分でだけこの揺らぎを人為的に制御し、揺らぎのない低雑音化を実現した光だ。
今回開発した新光源は、波長110nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)のスクィーズド光を出せるのが特徴。従来は波長10nm以下の光を出せる光源しかなかったが、この波長を一気に10倍以上に広帯域化し、光ファイバー通信の帯域の光を実現した。
さらに、このスクィーズド光の光子の数を識別できる超高感度検出技術も開発、世界で初めてスクィーズド光の光子が偶数個の光子から構成されるという特殊な性質「偶数光子性」を直接観測することに成功した。この結果、現在の光通信の1,000倍以上の大容量通信を可能にする波長多重量子通信の実現可能性が実証できたという。
今回の成果により、光ファイバー通信の波長帯域で光源と検出技術が実現できたため、安価で高性能な光部品との組み合わせが可能になった。実験室レベルにとどまっていた波長多重による量子通信の研究開発が、光ファイバーを使ったシステム上で実証できるようになると、研究グループは期待している。