(独)産業技術総合研究所は6月9日、フランスのパリ郊外に本部を置く「国際度量衡局(略称:BIPM)」と同日、核磁気共鳴(NMR)を利用する有機化合物の定量分析法「定量NMR法」の普及と発展を図るため研究協力協定を締結したと発表した。NMRは、原子核の回転(スピン)を利用して物質の構造や状態を調べる計測法で、有機化合物、生体の成分、高分子化合物などの構造決定に広く使われている。
■食品・医薬などの品質管理への利用期待
BIPMは、度量衡の単位を統一するために1875年に設立された歴史ある計量標準の国際的な機関。今回の協定は、産総研主導で開発された定量NMR法をBIPMが有機化合物の新定量分析法として注目、BIPMのトップを務めるマーティン・ミルトン局長が昨年7月に産総研を訪れて交渉がスタート、締結に至った。
定量NMR法は、有機化合物の分子中に存在する水素原子の数に依存する信号強度を精密に分析して有機化合物の物質量を求めるという定量分析法で、食品・医薬・環境などの分野の品質管理への利用が期待されている。
両機関は、今後、定量NMR法を世界中で利用できるようにするための共同研究を行っていく計画で、「世界各国の計量機関における定量NMR法の測定精度を向上させ、有機化合物の主たる純度評価法として発展させる」と産総研はいっている。
協定締結と同時に6月9日からBIPMの研究者2人が、つくば市(茨城)の産総研で共同研究活動に入っている。