(独)産業技術総合研究所は7月7日、複数の種類の太陽電池を重ね合せて発電効率の高い太陽電池を作る新たな多接合技術を開発したと発表した。電気的・光学的にほぼ損失なく様々な種類の太陽電池を自由自在に直接接合できる。安価な超高効率多接合太陽電池の開発・普及が期待できるという。
■安価な多接合電池の開発可能に
多接合太陽電池は、吸収する太陽光の波長が異なる太陽電池セルを直列に重ね合せ、太陽光を無駄なく吸収することにより光電変換効率を高めた太陽電池。これまで電池セルの接合法としては、複数のセルを結晶成長で一括形成する方法や、セル表面をプラズマなどで活性化して直接接合する方法があるが、技術的に難しかったり製造コストが高かったりし、宇宙用などに用途が限られていた。
開発した新技術は、「スマートスタック多接合技術」と呼ばれ、接合する電池セルの接合界面にパラジウム(Pd)のナノ粒子を配列し、重ねるセルに荷重をかけて接合する。表面平坦性の劣るCIGS太陽電池(4元素から成る化合物半導体系太陽電池)を含め複数セルを自在に接合できる。Pdナノ粒子は小さく薄いので光損失は少なく、また低抵抗の電気経路となる。
長波長領域を吸収する安価なCIGS上に短波長領域を吸収するガリウムヒ素(GaAs)とガリウムインジウムリン(GaInP)太陽電池を接合して作製した3接合太陽電池は変換効率が24.2%、GaAs基板とInP基板上に作製した4接合太陽電池は効率30.4%だったという。
今後は大面積化、低コスト化、量産化などの技術開発を進めるとともに、発電効率40%以上を目指したいとしている。
スマートスタック技術により試作したGaInP/GaAs/InGaAsP/InGaAs 4接合太陽電池。変換効率~30.4%、開放電圧~2.82V。最適セルの組み合わせにより効率40%以上が実現可能(提供:産業技術総合研究所)