(独)農業生物資源研究所は8月19日、非天然型アミノ酸をシルクタンパク質中に組み込むことができるカイコを作り出したと発表した。このカイコが作る新たなシルクには様々な分子を結合でき、生体適合性に優れた、これまでにない再生医療用材料の開発が期待できるという。
■優れた生体への適合性
カイコが作るシルクはタンパク質からできており、生体に安全であることから医療用材料としての用途開発が注目されている。なかでも再生医療の足場材料に応用する研究が近年各国で精力的に進められている。
再生医療用の足場材料は、体内に入れる細胞の分化・誘導を促進し、組織を再生させる足場となる材料で、用途によって求められる性質は様々なことから、用途に応じた性質をシルクに付加させる汎用的な手法の開発が求められている。しかし、シルクを構成している天然型アミノ酸の化学反応性は限られており、様々な物質を結合させることは困難だった。
この問題に取り組んでいた研究チームは今回、シルクタンパク質構成アミノ酸の一つ、フェニルアラニンの代わりに、化学反応性に富むアジド基を持つ非天然型アミノ酸をシルクタンパク質中に取り組むようにカイコの遺伝子を改変。また、シルクタンパク質を合成する組織の絹糸腺でのみこの改変遺伝子が働くようにカイコの遺伝子を組み換えた。
さらに、非天然型アミノ酸の取り込みが高まるよう、与える飼料にも工夫を加え、遺伝子組み換えカイコが作るシルクタンパク質に多くの非天然型アミノ酸を持たせることに成功した。
組み込んだアジド基はクリーンな化学反応として知られる「クリック反応」に用いることができ、有用性が大きい。この反応によって実際に蛍光分子や薬剤モデル分子を簡便に結合できることを確認した。今後は各種の医療用材料を作製し、細胞実験などを進めたいとしている。