(独)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の野菜茶業研究所と(公財)かずさDNA研究所は9月19日、ナスのゲノム(全遺伝情報)を世界で初めて解読したと発表した。遺伝情報を記録する暗号である塩基配列をすべて決定、約4万2,000個の遺伝子があることを突き止めた。病気に強い、収穫量が多いなど、画期的な新品種の開発を加速できると期待している。
■新品種の開発を加速へ
ナスはインド原産のナス科植物で、日本では奈良時代から栽培されている主要作物。ゲノム解読は、同じナス科の作物で南米原産のトマトやトウガラシ、ジャガイモなどに比べると遅れ気味だった。そこで農研機構とかずさDNA研究所が3年前に共同研究チームを立ち上げ、日本の典型的なナス品種「中生真黒(なかてしんくろ)」を用いてゲノム解読に着手した。
ゲノムはすべての遺伝情報を4種類の塩基の配列で記録したものだが、研究チームはその全配列を解読、推定で11億2700万塩基対あることを突き止めた。この配列には、ナスが成長し、生きていくのに欠かせないタンパク質を作るための遺伝情報である遺伝子が約4万2,000個存在していた。
これらの遺伝子のうち約7,600個はナス特有のものと推定され、ナスを紫色にする色素のアントシアニンや強い抗酸化作用を持つ物質の合成に関係したものもあった。病害抵抗性などに関する有用遺伝子も多数見つけた。
研究チームは、ナスの品種など系統の違いを見分けるDNAマーカーを約1,700個開発、個々の遺伝子が染色体上のどこにあるかなどを示す染色体地図も作成した。今後、新品種開発などを効率よく進めるための有力な手段になるとしている。