筑波大学は11月19日、2010年にチリで発生した巨大地震を独自に開発した手法で解析した結果、地震の発生メカニズムを理解する上できわめて重要な新知見が得られたと発表した。地震時に大きくずれ動く領域(アスペリティ)の破壊に先立って高周波の放出が発生するなど、地震波の高周波放出現象が、地震の時の大きな滑りを誘発し、さらに大きなすべり同士をつなげる役割を果たしている可能性があると示唆している。
■高精度で高周波源の位置・時間の割り出しに成功
地震によって発生する地震波のうち、高周波側の約1Hz(ヘルツ)の波は、地震波の破壊伝播速度やすべり速度の急変によって引き起こされることが知られている。高周波のこの放出を詳しく知れば、地震発生メカニズムのより深い理解につながるとされているが、この解析は技術的に難しく、これまで研究はあまり進んでいなかった。
筑波大の八木勇治准教授らの研究チームは、高周波の放出源の位置と時間を高い精度で求められる手法を開発し、これをチリ地震の解析に適用することによって、高周波放出源を今までにない高い解像度で推定することに成功した。
この高周波放出源と、震源インバージョン法という手法で求めた断層すべりの時空間分布を比較したところ、比較的強い高周波の励起現象が、アスペリティの破壊の直前に発生していること、また、2つの大きなアスペリティ間では、すべりの先端に沿って比較的弱い高周波の波源が複数分布していることが判明した。
このことから、高い高周波の励起現象が大きなアスペリティ破壊の引き金となると同時に、弱い高周波を励起するような破壊が複数の大きなアスペリティ破壊を橋渡しする可能性が示唆されたという。
これらの成果は、大きなアスペリティがどのような条件で破壊されるのか、地震の規模を決めるような複数の大きなアスペリティの破壊同士がどのようにしてつながれるのか、といったことを理解する上できわめて重要な知見としている。
上:解析には、沈み込むプレート表面の形状を考慮した非平面断層を仮定、星印は震央を示す。下:結果のスナップショット。暖色系になればなるほど、比較的強い高周波の放出を示す。白い等高線は、震源インバージョン法によって求められた断層すべり(提供:筑波大学)