ホヤとヒト、同じ仕組みで目や耳など感覚器形成
―ホヤの幼生期、感覚神経作るメカニズムを解明
:産業技術総合研究所/大阪大学/東北大学(2014年11月18日発表)

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ホヤ幼生頭部の感覚神経が作られる仕組み。後期嚢胚(上)の神経板境界に存在する6個の細胞(緑色)が適切な量のBMPシグナル分子を受け取ることにより幼生頭部の10個の感覚神経(下)ができる(提供:(独)産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所と大阪大学、東北大学は11月18日、海のパイナップルと呼ばれるホヤの感覚神経がヒトの目や耳などの感覚器と同様の仕組みで作られることを突き止めたと発表した。感覚器の進化の謎を解く重要な手がかりになるほか、人間の先天的な感覚器障害の発症の仕組みを解明するのに役立つという。

 

■神経系形成に脊椎動物と同様のシグナル分子

 

 産総研の大塚幸雄主任研究員、阪大の岡村康司教授、東北大の勝山裕講師の研究グループが明らかにした。

 海の珍味としても知られるホヤは、進化の過程で人間などの脊椎動物と約5億年前に分かれた無脊椎動物。産総研は神経系が形成される仕組みを解明するために脊椎動物に最も近い無脊椎動物のホヤを使って研究、これまでにホヤ幼生の頭部に機械的な刺激を感じる神経が10個あることを明らかにした。

 そこで今回、これらの感覚神経が、受精卵が細胞分裂してホヤになる発生過程でどのように作られていくかを詳しく解析した。

 その結果、ホヤの体を形成する初期段階の細胞の塊の一部「神経板境界」と呼ばれる部分にある細胞から、10個のうち6個の感覚神経が作られていた。さらに、これらの感覚神経が作られるには、シグナル分子である「骨形成タンパク質(BMP)」が適切な量だけ分泌される必要があることが分かった。これは脊椎動物の感覚神経の形成過程と同じであり、感覚神経形成の初期過程は、脊椎動物とホヤには共通の仕組みがあることを突き止めた。

 研究グループは、「感覚神経形成の初期過程はホヤと脊椎動物で共通している」として、脊椎動物の感覚器形成過程を研究するための有用なモデルになると期待している。

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