高エネルギー加速器研究機構(KEK)は11月18日、同機構の小林隆教授が京都大学の中家剛教授と共同で2014年度の「仁科記念賞」を受賞したと発表した。
仁科記念賞は、日本の物理学に大きな功績を残した故仁科芳雄博士を記念して、原子物理学の基礎とその応用の分野で優れた業績を挙げた研究者に授与される賞。
小林、中家両氏の受賞は、両氏が牽引する「T2K(Tokai-to-Kamioka)実験」で達成した「ミューニュートリノビームからの電子ニュートリノ出現事象の発見」が評価されたもの。
T2K実験は、東海村(茨城・那珂郡)のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)から発射した素粒子の一つ、ニュートリノを295km離れた神岡町(岐阜・飛騨市)にある「スーパーカミオカンデ」と呼ばれる検出装置を使って観測する国際共同実験で、世界12カ国から約500人の研究者が参加している。
そのニュートリノには、ミューニュートリノ、電子ニュートリノ、タウニュートリノがあり、小林、中家両氏は東海村から発射したミューニュートリノが神岡町に到達するまでの飛行中に電子ニュートリノに変わることを見つけ受賞した。
ニュートリノが変化する現象は、「ニュートリノ振動」と呼ばれ、理論的には数十年前から予測されていたが、実証したのは初めて。仁科記念賞を運営する仁科記念財団は、今回の発見を「宇宙の物質起源の謎を解明するカギを握ると考えられているニュートリノにおける粒子と反粒子の性質の違いを実験的に明らかにできる可能性を示しており、今後の素粒子物理、宇宙物理の研究に多大な影響を与える」と評価している。