(独)農業・食品産業技術総合研究機構と北海道大学、(独)農業生物資源研究所、香川大学は12月1日、大豆の脱粒による収穫ロスを抑える遺伝子を見出したと発表した。機械収穫に適した脱粒しにくい品種の開発促進が期待できるという。
■機械収穫に適した品種開発促進へ
大豆は成熟すると乾燥によって莢(さや)がはじけ、脱粒する。これは種子を飛散させて子孫を残すために大豆が本来備えている機能だが、収穫前や収穫作業時に起こるこの脱粒で損失を被る例も多い。
大豆の主要生産国である米国では収穫期が乾燥しやすい気象であることや、早くから大規模コンバイン収穫が行われてきたことから、莢がはじけにくい、いわゆる難裂莢性を備えた品種が主流になっている。
日本では伝統的に水田の畔に植え、手刈りやバインダーでの収穫が多いことから裂莢は問題とされてこなかったが、近年機械収穫が増えており、難裂莢性品種の育成が求められている。
この問題に取り組んでいる農研機構を中心とする研究チームは、今回、莢のはじけを抑える難裂莢性遺伝子を突き止めることに成功した。この遺伝子は、第16番染色体上の1つの遺伝子が壊れてその機能を失ったものであった。この遺伝子は乾燥した時の莢のねじれを抑え、莢が裂開するのを防ぐ働きをしているという。
正常な機能を持つ、裂莢しやすくする遺伝子が優性であり、研究チームはこの優性遺伝子を「Pdh1」、新発見の劣性遺伝子を「pdh1」と名付けた。米国で栽培されている大豆は、長い栽培過程でphd1を持った品種が優先的に選ばれ、現在は90%以上の品種がpdh1型になっているという。
農研機構は今後、大豆諸品種に難裂莢性を導入して系統の育成に力を入れ、大豆生産の安定化を支援したいとしている。
乾燥条件下でのpdh1型品種とPdh1型品種の裂莢程度(提供:(独)農業・食品産業技術総合研究機構)