(国)物質・材料研究機構は7月29日、シリコンの極微粒子を塗るだけという簡単な方法で、シリコン系の太陽電池の変換効率を向上させることに成功したと発表した。この手法により、変換効率は約3割アップすることが確かめられた。国際ナノアーキテクトニクス研究拠点のムリナール・ダッタ博士研究員と深田直樹グループリーダーらによる研究成果。
■一般的なシリコン系太陽電池でも可能
太陽電池材料はシリコンの結晶型やアモルファス(非晶質)型が現在の主流だが、次世代型としてナノワイヤ型が注目されている。これはナノ(ナノは10億分の1)レベルの大きさの細線でできており、コスト削減が見込まれるが、シリコンナノワイヤ単独では、光の吸収効率が低い。
一般的に太陽光のスペクトルは広い波長分布をもっており、1種類の材料・構造だけでは変換効率の向上は困難。さらに変換効率を高めるにはシリコンの微粉体であるナノ粒子との組み合わせが提案されているものの、ナノ粒子は結合の手が空いているため反応性が高く、不安定で使い難かった。
同機構は、有機分子の1−オクタデセンを使って直径5nm(ナノメートル、1nmは10億分の1nm)以下のシリコンナノ粒子の表面を炭素・水素結合で安定化させた。これをシリコンナノワイヤ太陽電池の表面に塗布することで、変換効率を10%から12.9%に向上させることに成功した。
ナノワイヤだけでは太陽光の吸収効率が不十分だったが、ナノ粒子との組み合わせによって広い範囲の太陽光の利用で誘起された電気を有効に取り出すことが可能になったと考えられる。また研究グループは、この手法はシリコンナノワイヤ型だけでなく、現在使われているシリコン系太陽電池にも簡単に応用ができるとしている。