(国)農業生物資源研究所と岡山大学は7月29日、ドイツ、オーストラリアなど6カ国の研究機関との共同研究で栽培オオムギの起源を解明したと発表した。ビール製造や家畜の飼料などに使われるオオムギが、どこで、どのようにして生まれたかは、これまで分かっておらず、研究グループは、世界で初めて突き止めたとしている。
■品種改良の効率加速が期待
オオムギには、成熟すると実が落ちてしまう野性オオムギと、実っても落ちない栽培オオムギがある。研究グループは、野生オオムギの実が落ちることに2つの遺伝子が関わっていることから、ゲノム情報、遺伝学的解析、分子生物学的な証明を組み合わせた最新の科学技術を駆使して、その2つの遺伝子のDNA(デオキシリボ核酸)配列を決定し、栽培オオムギの起源を解明した。
それによると、約1万年前にイスラエルの南レバントと呼ばれる地で野生オオムギが持つ2つの遺伝子のうちの片方に突然変異が起き、その子孫が欧州など西に普及。その後、北西シリアから南東トルコにかけての北レバント地域で別の突然変異が発生、それが日本など東に広まって“最古の農業”といわれる栽培オオムギに2つの系統の栽培種ができたという。
研究グループは、「現在利用しているオオムギは2つの突然変異が起きた植物のいずれかの子孫になる」としており、互いに性質が異なるため、それぞれの品種グループにない性質を最新のゲノム情報などを活用して積極的に導入することにより、品種改良の効率が加速されると考えられるという。