大阪府立大学と(国)物質・材料研究開発機構は9月15日、人工ダイヤモンドを作る際の超高圧合成法を使って、優れた活性と耐久性を備えた新たな触媒材料(CaCu3Fe4O12)の開発に成功したと発表した。貴金属元素を使わないこの新触媒材料は、安価で水の電気分解にも有効に作用することから、水素製造や次世代蓄電池への応用が期待される。
■低コストで水素製造など実現へ
高い能力を持つ触媒材料は、高価で資源量の少ないインジウムやルテニウムなどの貴金属元素が含まれているため、安価な触媒材料の開発が世界中で進められている。しかし、これまで実用材料として使われる高い触媒活性と耐久性を持った材料は得られていない。
新開発の新触媒は、鉄・銅・カルシウム・酸素といった安価で資源量が豊富な元素で構成されている。今回、これらの材料を15万気圧、1000度の超高圧、高温を利用して作製した。水の電気分解では水素とともに酸素を発生させるが、酸素に余分な電力(過電圧)を食われて効率が悪い。この新触媒を使うと過電圧を小さくできる。貴金属元素を含む既存材料を凌駕する触媒活性を示し、高い耐久性も実現した。
結晶中の電子密度を調べたところ、鉄・酸素間と銅・酸素間の両方に共有結合の電子分布があった。共有結合はダイヤモンドの硬さの起源になっており、この新触媒も高圧合成により共有結合性が高く、高い耐久性を獲得した。
同研究所では今後、 材料の組成や合成方法を工夫して実用材料に繋げ、水素製造にかかる電力エ燃ルギーの損失とコストを抑えることで水素エネルギー社会のへの貢献を目指すという。