(国)農業生物資源研究所と富山県農林水産総合技術センターは9月14日、健康や美容に良いとされる黒いお米「紫黒米(しこくまい)」が黒くなる原因遺伝子部位を特定したと発表した。この遺伝子部位を既存のブランド米に導入すると、おいしくて健康に良いお米を容易に育種できるという。
■抗酸化作用のアントシアニン色素やビタミンなど豊富
「古代米」として知られる紫黒米は、抗酸化作用があるアントシアニン色素を含み、ビタミンやミネラルも多いことから、現在薬膳料理などに利用されている。
富山県農林水産技術センターはこれまでに、紫黒米の1番、3番、4番染色体に米を黒くする遺伝子があることを見出し、それぞれを「Kala1」、「Kala3」、「Kala4」遺伝子と命名、コシヒカリと紫黒米を交配することによってこれらの遺伝子を持つ「黒むすび」を、多くの手間と時間をかけて育種した。
この育成過程で、コシヒカリを紫黒米にするには「Kala4」遺伝子が最も重要で必須であることをつかんだが、黒くなる原因の遺伝子領域やその塩基配列は分かっていなかった。
共同研究チームは今回、紫黒米遺伝子をブランド米に容易に導入する手法の開発を目指し、原因遺伝子の特定を試みた。
その結果、原因の塩基配列は、タンパク質の産生を決めているKala4遺伝子の本体部分(タンパク質をコードしている塩基配列)にあるのではなく、その上流にあって、遺伝子の働きを制御している部分にあり、黒くなる原因はそこに生じた突然変異によることを突き止めた。
この突然変異はイネが栽培されるようになった後に、熱帯ジャポニカ種で起こったもので、その後自然交配によりインディカ米にも移り、アジア地域に広がったことが分かった。
判明した制御配列は約5000塩基対から成り、「Kala4」遺伝子のこの部分を既存の白いお米の品種に導入することにより、抗酸化物質を含む健康に良いお米を容易に育種できるという。