「ゆっくり地震」を室内実験で再現に成功
―「巨大地震」と同一断層で起こりうることも
:筑波大学/海洋研究開発機構/京都大学/独・ブレーメン大学(2015年10月16日発表)

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掘削地点(C0019)、東北地方太平洋沖地震の震央、巨大地震発生域、ゆっくり地震発生域の分布を示す。掘削地点(C0019)の海底面下約820mから採取したプレート境界断層試料を実験に用いた(提供:筑波大学) 

 筑波大学は10月16日、(国)海洋研究開発機構、京都大学、ブレーメン大学(ドイツ)と共同で、東日本大震災の際に動いた宮城県沖の断層から採取した岩石を使い、大震災前に起きていたのと同じ「ゆっくり地震」を室内実験で再現することに成功したと発表した。これまでに行った同じ断層域の岩石を使った実験では、地震時の高速断層運動で断層は滑りやすくなることが分かっている。今回の実験で、ゆっくり地震の滑りと巨大地震の高速滑りが同じ断層で起こりえることが実証されたとしている。

 

■東日本大震災震源域の岩石で実証

 

 通常の地震は、岩盤が数秒から数十秒で急速に滑るのに対し、ゆっくり地震は数日から1年以上かけて滑る。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震でもその直前の同年2月中旬から3月上旬にかけ宮城県沖でゆっくり地震があった。

 今回の実験は、海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」で東北地方太平洋沖地震震源域のプレート境界断層浅部の海底面下820mを掘削して採取した断層試料を使った。試料に海水を充填し、7MPa(メガパスカル、約70気圧)の圧力をかけて実際のプレートの沈み込み速度に相当する毎秒2.7nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の超低速で試料同士を滑らせた。その結果、摩擦強度の変化、滑り速度などの計測数値は、世界で観測されているゆっくり地震とほぼ同等であったことから、ゆっくり地震を再現することに成功したことが判明。

 すでに同じ地震域のプレート境界浅部から採取した試料で行った室内実験で、東北地方太平洋沖地震のときの高速滑り(毎秒約1m)が再現されており、地震時の断層滑りのメカニズムが明らかになっていた。しかし、同様の試料でゆっくり地震を引き起こしうるのかは不明だった。太平洋プレートの沈み込み速度に相当する超低速での断層のふるまいそのものがあまり注目されてこなかったからだ。

 従来、プレート間の固着が強い領域が巨大地震発生領域と考えるモデルが提唱されてきた。が、今回の実験の結果から、プレート境界断層浅部では、ゆっくりしたすべりと高速滑りの巨大地震が同じ断層で起こりうることが明らかになった。研究グループでは、今回の結果は、ゆっくり地震の発生域であるプレート境界断層浅部でも巨大地震の震源域に含める新たなモデルの検討を迫るものとしている。

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