地盤・杭基礎の地震被害モニタリング技術を検証
―振動台実験、地震後の杭の健全性を速やかに検知可能に
:防災科学技術研究所/京都大学/大成建設(2015年12月24日発表)

 (国)防災科学技術研究所は12月24日、兵庫県内の実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を使って、建物を支える地中の杭が、大きな地震発生でどんな損傷を受けたかを判定する地震被害モニタリングシステムの検証実験を行ったと発表した。同研究所などのプロジェクトチームが、杭の健全性を地震後即時にモニタリングするシステムを開発、その検証を行ったもので、その結果、杭の健全性や被害状況の把握を地震直後に速やかにモニタリングできることを確認したという。京都大学防災研究所、大成建設技術センターと共同で実施した。

 

■傾斜計など800を超すセンサーで把握

 

 地震直後に地中の地盤・基礎構造とライフラインの傾き、変形の程度(健全度)を迅速に把握することは、建物の維持管理や復旧・回復には欠かせない。これらは目視できないため、被害の把握には多くの時間と費用がかかる。

 このため、健全度を即時判断するためのモニタリングシステムの開発を進めてきた。今回の検証実験は、地震による杭の損傷を徐々に広げ、その損害状況を、多数のセンサーを使ってモニタリングングし、健全度判定結果と実際の損傷状況と照合し、システムの妥当性を検証しようというもの。

 円筒形の大型容器(直径8m、高さ6.5m)に砂の地盤を作り、それぞれ直径15cmの鉄筋コンクリート造(RC、6本)と鋼管杭(9本)の2種類の基礎模型を埋め込んだ。杭と地盤には、傾きを測定する「傾斜計」、歪みを測定する「光ファイバー」、損傷具合を検知する「振動発生・受振装置」のほか沈下計、温度計、加速度計など合計800個以上のセンサーを設置した。

 E-ディフェンスで、阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震(平成7年)などの地震動を3日間にわたって再現し、次第にレベルを上げながら段階的にデータを採取した。終了後に容器の地盤を掘削し、杭と建物の目視観察とデータとの関連を確認した。

 その結果、中地震レベル(地表面で震度4)では杭頭にわずかなひび割れができた。大地震レベル(6弱から6強)では、杭の鉄筋に変形ができ、杭頭部に大きな引っ張り歪みが残った。さらに地震動のレベルを大きくしたところ、杭の傾斜が100分の1を超え、杭頭が大きく損傷し、コンクリートが剥落した。

 今回の実験では、健全度の判定に杭と建物の傾斜具合を用いた。実験の結果から、このモニタリングシステムにより、地震後の杭の傾きを即時に検知することができたとしている。

 一方、光ファイバーでは杭の残留歪み(地震後の変形の程度)を測った。こちらはデータ収集に若干の時間がかかるものの、より実際の現象に合った結果が得られることも分かった。

 この実験は文部科学省の委託研究「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト」の一環で、平成25年度には鉄鋼造高層建物を、26年度にはRC建物についてそれぞれ大型振動台実験をし、地上の建物が完全崩壊するまでの損傷の進み方を調べてきた。今回はそれに続く第3弾。今回の実験を踏まえさらにシステムの信頼性向上を目指すという。

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図

上は、モニタリングシステムの概要、下は、杭頭部に見られたコンクリートの剥落状況(提供:(国)防災科学技術研究所)