単層CNT添加で最高水準の耐環境性ゴム材開発
―低コストで熱、熱水、酸、アルカリの耐性大幅アップ
:産業技術総合研究所/TASC(2016年1月25日発表)

 (国)産業技術総合研究所と技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)は1月25日、耐熱性、耐熱水性、耐酸性、耐アルカリ性などの耐環境特性が世界最高レベルのゴム材料を開発したと発表した。単層カーボンナノチューブ(CNT)をゴム材料に添加することによって実現した。ゴム材料の適用範囲の飛躍的な拡大が期待できるという。

 

■シーリング材としての応用、飛躍的に拡大へ

 

 天然ゴムをはじめとしたゴム状の弾性体、あるいは弾性を持つ高分子材料を総称してエラストマーといい、熱硬化性のフッ素ゴム、ウレタンゴムなどはその一種。ガスや液体のバリア性に優れ、さまざまな形状への成形が容易なことからシーリング材として特に優れているが、熱、熱水、酸、アルカリなどの環境下では劣化するため使用に制限があった。

 共同研究グループは今回、産総研のスーパーグロース法という製法で生成した高純度・長尺の単層CNTを、これらのエラストマー材料に、一本一本バラバラにした状態で均一に分散させる技術を開発し、単層CNTとエラストマーの複合材料を作り出した。

 この超高分散複合材料の性能を調べたところ、CNT未添加のフッ素ゴムでは、ゴム弾性の指標である貯蔵弾性率が200℃以上になると低下し始め、280℃、24時間で80%低下したのに対し、CNTを1%添加したフッ素ゴムでは貯蔵弾性率の低下はほとんど生じなかった。

 熱水環境試験では、フッ素ゴム製の市販耐熱ゴムで形態の変化や物性の低下が認められたが、CNT添加フッ素ゴムではいずれの変化とも起きなかった。

 耐酸・耐アルカリ性については、ポリウレタンにCNTを5%添加した材料と無添加材料で耐性比較試験をしたところ、CNT添加材料は未添加材料に生じたような劣化は認められず、引っ張り試験に耐えた。

 市販フッ素ゴムの中でも耐熱性の高いパーフロロエラストマーは、1kgで80万円~100万円と高価なため用途開拓が阻まれてきたが、今回開発した材料は安価なフッ素ゴム(kg約1万円)を基材に用い、パーフロロエラストマーに匹敵する耐熱性を実現しており、新用途の開拓・展開が見込めるという。

 今後、厳しい耐環境特性が求められる石油掘削装置や自動車、化学プラントのシーリングへの応用などが期待できるとしている。

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