(国)産業技術総合研究所は1月26日、商品の流通管理などのためのセキュリティタグを有機デバイスで作る技術を開発したと発表した。作製時にわずかに特性がばらつく有機デバイスを用いることで記録情報の複製を防ぎ、安全性の高いタグが実現できる。情報の複製が可能でコピー商品などが出回る危険を完全に防げなかったバーコードやIC(集積回路)による従来技術の弱点を克服できるという。
■コピー商品や紙幣の偽造防止などに有効
開発したのは、大気中で安定性の高い有機半導体、および有機材料と無機材料を組み合わせたハイブリッド絶縁膜を用いた電子回路。折り曲げ可能なフレキシブル基板上に作製でき、商品の真贋などを確認するためのIDタグとして利用できる。
電子回路はリングオシレーターと呼ばれる発信回路を2つ組み合わせて作る。2つの回路の発信周波数の大小を比較することで「0」か「1」かの数値が生成できるが、どちらの周波数が大きいかは有機デバイス製造の際に生じる特性のばらつきで決まる。このためタグの回路内に複数のリングオシレーターを作れば、ランダムにタグ固有の数値が生成できる。
従来のICタグでは、記録した数値などの情報が容易にコピーされてしまう恐れがあったが、有機材料の製造時のばらつきで生成する数値情報を利用するので複製は難しい。そのためコピー商品などに偽のIDタグとして使用される危険性はないという。
IDタグを使うときには電源が必要だが、新技術では2V(ボルト)という小さな電圧で駆動できるため数値情報の読み取り装置側が発する電波を受信、そのエネルギーを電力として利用できる。そのため開発した有機デバイスを商品や紙幣、有価証券に組み込めば、コピー商品や紙幣の偽造防止などに有効だ。
産総研は今後、有機デバイスの作成に印刷技術を組み合わせて生産効率を高めるとともに印刷時のばらつきも利用して、より安全性の高いセキュリティタグの開発につなげる。