複屈折を定量イメージングできる小型装置を開発
―試料を回転させずに高精度・高分解能の計測が可能に
:産業技術総合研究所/同志社大学(2016年1月26日発表)

 (国)産業技術総合研究所電子光技術研究部門と同志社大学の研究グループは1月26日、光の入射方向によって屈折率が異なる複屈折の大きさやムラを可視化できる技術を開発し、小型試験機で高精度の計測ができることを確かめた。植物の細胞壁やコラーゲンの観察をはじめ製品の製造ラインでの品質管理などへの実用化を目指す。

 

■錠剤中の結晶などの品質管理に応用

 

 複屈折とは、入射する光の偏向方向によって物質の屈折率が異なる性質をいう。高分子材料や液晶分子、光学結晶などが複屈折性を示す。また方向によって物理的性質が変わらない均一な物質でも、外部から力を加えると複屈折が見られるため、歪み検査などに使われる。

図

上は、今回開発した装置の主な構成要素、下は、試料と偏光分離回析素子の前後における偏光状態や光強度の分布のイメージ(提供:(国)産業技術総合研究所)

 開発した装置は、例えば右回りの円偏光=図の(a)=を観察光として使うと、複屈折性の試料(b)を透過した際に、大きさに応じて楕円偏向や直線偏光に変化する。試料にムラがあると、透過した後の偏向状態はムラを反映して場所ごとに異なる偏向状態=(C)=に変化する。

 このムラは、そのままでは肉眼やカメラを使っても見えないが、産総研が独自に開発した「偏向分離回折素子」を通すことで光の偏向状態が光の明るさとして可視化できる。

 試作した装置は、試料を回転させる必要がなく、1枚の写真撮影で複屈折データがとれる。振動のある環境にも強く、時間変化の追跡や動画撮影にも対応できるなど活用範囲が広い。

 これによって、製造中の透明フィルムの厚みや組成ムラをモニターでき、錠剤中の有効成分の結晶サイズの管理や、植物の細胞壁、繊維状組織のコラーゲンなども観察することができるなど高精度・高分解能の計測ができる。

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