ナノ粒子を利用し、太陽熱で高効率に水を加熱
―窒化チタンで9割近い効率で太陽光を熱に変換
:物質・材料研究機構(2016年1月25日発表)

 (国)物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点は1月25日、セラミックスの超微細なナノ粒子が、太陽光を高効率で吸収し、急速に水温を上昇させることを確認したと発表した。中でも窒化チタンのナノ粒子を水に分散させると、9割に近い高効率で太陽光を熱に変換した。将来、床暖房や給湯、さらに汚水や海水などの蒸留にも応用できるものとみている。

 

■床暖房や汚水、海水の蒸留などに応用を期待

 

 太陽光の変換は、電気より熱への変換効率が高い。物質の探索にあたっては、従来は逐一候補を総当りすることが多かったが、研究グループは理論的に物質の基本性質をつかみ、効率のよい条件を探し出す探索法を選んだ。その結果、遷移金属窒化物や炭化物が有望で、中でもセラミックスの窒化物チタン(TiN)や炭化タンタル(TaC)のナノ粒子に注目した。

 その上で、窒化物チタンのナノ粒子を分散させた水に擬似太陽光を当てたところ、純水と比べ水蒸気発生量も温度上昇量も約2倍高く、変換効率が高いことを確認した。ナノ粒子が周りの水に直接熱を伝えるため90%近い変換効率を実現できるとみている。容器の断熱性などを上げればさらに効率を高められる。市販の太陽熱温水器などは、集熱パネルや集熱パイプなどの装置を使っているために伝熱ロスが大きかった。

 ナノ粒子による太陽熱の利用は、高い蒸発量を生かして汚水や海水の蒸留が可能になるとみている。試算では、10ℓの汚水から5時間で約1ℓの蒸留水が得られる。蒸留器は構造が簡単で、太陽光だけがあればよく、災害時の給水や、途上国での飲料水対策に期待が高まっている。

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図

(a)は、ナノ粒子を用いた太陽熱温水装置の模式図。(b)は、 ソーラーシミュレーターからの集光光を窒化チタンのナノ粒子が分散した水に照射している様子。水温が上がる前から水蒸気発生が目視できる(提供:(国)物質・材料研究機構)