蜜入りリンゴのおいしさは香りが重要な要素
―糖類の量や甘味度は蜜なしのリンゴと差は見られず
:農業・食品産業技術総合研究機構/小川香料ほか(2016年3月17日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は3月17日、小川香料(株)、青森県産業技術センターとの共同研究で、甘くておいしいと人気のある蜜入りリンゴについて、おいしく感じるのは、糖度や甘味度にあるのではなく、香りにあることが分かったと発表した。香り成分であるエチルエステル類が多く含まれていることによるためで、今後、香りに着目した栽培など国産農産物の品質向上に役立つと期待している。

 

■エチルエステル類が好ましさを高める成分

 

 蜜入りリンゴは貯蔵性が低く、欧米では生理障害として扱われているが、国内やアジア各国では甘くておいしいと人気が高い。しかし、糖類や甘味度は蜜なしと差がないケースが多く、人気の理由はナゾだった。

 農研機構中央農業総合研究センターでは、農作物の多くの成分を分析できるメタボローム解析法で、農作物の風味を含有成分から明らかにする研究に取り組んできた。今回、研究グループはこの手法でリンゴを分析したところ、「ふじ」の香気成分が蜜なし果と大きく異なることが分かった。

 「ふじ」、「こうとく」の蜜の有無による味・香りの成分や官能評価試験との関連を調べた。その結果、蜜入り果の香りは蜜なし果より高かった。試食すると、蜜入り果は、フルーティー・スイートといった風味で、蜜なしより好ましいとの判定がでた。香りを感じられないようノーズクリップを装着して鼻をつまんで試食すると、味の強さでは差はなく、結果として香りの効果の強かったことが判明した。

 また、香気成分や味を示す成分を分析したメタボローム解析では、蜜入り果でエチルエステル類とメチルエステル類の増加がみられた。エチルエステル類はフルーティ・スイートな香りを示すことが知られている。また、メチルエステル類は、エチルエステル類と共存することで香りに広がりを与えるという研究結果があり、「エチルエステル類が、蜜入り果の好ましさを高める成分」としている。

 果実内部の酸素濃度を調べた結果、蜜のところは極めて低い状態で、低酸素状態からエタノール発酵が進み、エチルエステル類が増えると考えられるという。

 これまで、果物のおいしさは糖の含有量や糖度で評価されてきたが、今回の研究で香りの重要性が明らかとなった。今後は香りに着目した新品種作りや栽培・貯蔵などで品質向上に役立つことが期待できるとしている。

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