九州大学、(株)システムインフロンティア、大阪大学、筑波大学は6月14日、電子顕微鏡の中で大きさがnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)スケールの超微細な物質の塑性変形(元に戻らない変形)を三次元の立体画像で撮影できるシステムを共同で開発したと発表した。
「その場変形電子線トモグラフィーシステム」と呼び、別名を「リアルタイム電子線トモグラフィーシステム」という。(株)メルビルと米国のバージニア工科大学が共同で金属の塑性変形の様子をこのシステムで三次元画像に納めることに成功、有効性を実証した。
電子顕微鏡内で不可逆の塑性変形を三次元で直接観察した例はこれまでなく初めて。
科学技術振興機構(JST)の先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環で開発した。
透過電子顕微鏡は、nmの超微細組織の観察が行なえ、更に分光装置を取り付ければ元素の分析などもできるようになることから、生物をはじめ金属、高分子、セラミックス、半導体など幅広い分野で使われているが、得られるのは平面の二次元画像。
そこででてきたのが、様々な角度から撮影した二次元画像をコンピューター処理することで三次元化するコンピューター断層撮影技術を応用した電子線トモグラフィーで、ナノメートルレベルの立体観察が可能になっている。
しかし、その電子線トモグラフィーも1つの三次元画像に必要な画像データの収録に30分から数時間かかるという弱点を抱えている。
それに対しJSTが上記のプログラムで取り組んでいるのは材料に外から力を加えて生じるnmレベルの構造変化をリアルタイムで三次元観察する「マテリアル開発系リアルタイム電子線トモグラフィーシステムの開発」。今回開発したのは、そのプロトタイプ。
実証実験は、テストする金属として市販のスズ鉛系ハンダ合金を使い、透過電子顕微鏡内で引っ張り・圧縮変形を加えながらその変化の様子を観察する方法で行っているが、約1μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)のヒモ状のスズ鉛系ハンダ合金の形態が変わっていく様子をナノレベルで捉え、49枚の三次元画像を2分未満で収録している。
2017年3月までに開発を終え、共同開発に参加しているシステムインフロンティアが製品の販売を行う予定になっている。