炭化ケイ素の高速エピタキシャル成長技術を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は2月28日、炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスの作製に必要な高速エピタキシャル膜製造装置の開発に成功し、従来の生産装置に比べ2桁速い成長速度を実現したと発表した。
 次世代のパワーデバイス(電圧・電流などを変換・制御する半導体素子)といわれる炭化ケイ素製パワーデバイスは、現在のシリコン製パワーデバイスに比べ、電力損失が小さいだけでなく、より高温・高速での動作が可能になり、電力変換機器の高効率化、小型化などが期待される。しかし、炭化ケイ素パワーデバイスの特性を発現させるエピタキシャル膜と呼ばれる薄膜の生産効率が悪いため炭化ケイ素パワーデバイスは価格が高く、普及するまでに至っていない。
 炭化ケイ素のエピタキシャル膜は、通常化学気相成長法(CVD法)を用いて作製される。今回の研究では、CVD法における炭化ケイ素エピタキシャル膜の成長メカニズムを基礎から抜本的に見直した。この成果に基づいて、原料ガスを膜が成長する基板に無駄なく垂直に吹き付ける新しい装置「近接垂直ブロー型CVD炉」を開発し、通常の成長温度(1600℃)で1時間当たり100μm(マイクロメートル=1μmは1千分の1mm)以上の成長速度を実現した。さらに、炉内部の構造に改良を加え、より性能のよいCVD炉も開発することができた。
 従来の装置より2桁も高速のエピタキシャル膜成長技術の開発に成功したことで、炭化ケイ素パワーデバイスの実用化に大きく寄与するものと期待されている。

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