(独)農業生物資源研究所は7月6日、糖の一種の「トレハロース」を生物の細胞内に取り込ませる遺伝子の単離(分離)に世界で初めて成功したと発表した。
トレハロースは、昆虫や植物、キノコ類、酵母、細菌などに存在する天然の糖で、食品や化粧品などに添加物として使われている。さらに最近は、細胞を乾燥から保護したり、植物の成長を制御するなど様々な生理活性を持つことが分かってきているが、この性質を利用するには目的とする生物の細胞内に大量のトレハロースを自由自在に取り込ませることが必要になる。しかし、これまでその方法は見つかっていなかった。
同研究所の研究グループは、トレハロースを細胞に大量に蓄積する「ネムリユスリカ」という昆虫からトレハロースを細胞膜の内外に輸送する遺伝子を単離することに成功、トレハロースを細胞内に人為的に取り込ませることや、排出させることを可能にした。
同研究所では、「今後、生物を生きたまま乾燥保存する技術の開発や、切り花の花持ちの長期化、乾燥に強い作物の開発など、新たなトレハロース利用法の開発が期待される」と言っている。
この成果は、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載される予定。研究の一部は、すでに国内特許出願している。
No.2007-26
2007年7月2日~2007年7月8日