(独)産業技術総合研究所は9月18日、光る有機ナノチューブを開発したと発表した。赤や青など4色を出すことに成功しており、医療分野などへの応用が期待される。 同研究所は、昨年有機ナノチューブの大量合成技術を開発したが、製造時に蛍光分子を混ぜるだけで蛍光を発する光る有機ナノチューブができることを発見した。 有機ナノチューブは、ブドウ糖とオリーブオイルに含まれるオレイン酸を原料に合成された「両親媒性分子」(水に溶けやすい部分と、水にとけにくい部分を一つの分子中に持つ分子)が、水中で自発的に集合して微細なチューブ状構造(中空構造)を形成している材料で、優れた水中への分散性と、タンパク質などを内部に取り込む能力を持つ。 今回の成果は、同研究所が開発した有機ナノチューブの大量合成法の工程の中で、両親媒性分子の粉体と蛍光(光を当てるとその光より長波長の光を発する現象)を示す一般的な蛍光分子の粉体を有機溶媒の中で溶かし、両親媒性分子が自己集合化する際に蛍光分子を取り込ませることで実現したもの。電子顕微鏡で観察したところ、蛍光分子はナノチューブの管壁の中に安定的に埋め込まれ、中空構造は空(から)のまま保持されていることが分かった。 また、発光色を変えることも容易で、赤色、橙色(だいだいいろ)、黄色、青色の4色を試作した。 有機ナノチューブは、両端が開いた微細なチューブなので、その両端から薬剤を徐々に放出するDDS(ドラッグ・デリバリー・システムの略=薬物送達システム)材料として注目されているが、それには薬剤の運搬状況を細胞などの生体内で観察できるようにしないとならない。 今回の光る有機ナノチューブを使えば、これまで困難であった生体内での薬剤の包接・運搬状況の観察が可能になると見られ、同研究所では今後DDSに関する研究を進めていくことにしている。 詳しくはこちら |  |
左から赤色、橙色、黄色、青色に光る有機ナノチューブ(提供:産業技術総合研究所) |
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