アスベストの溶融無害化技術を開発:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は1月23日、赤外線の集光加熱によるアスベストの溶融無害化技術を開発したと発表した。この技術により、壁・天井などに吹き付けられた飛散性のアスベスト含有材を剥離することなく、現場での簡便な処理が可能になった。
 アスベスト(石綿)は、天然に産する繊維状結晶の鉱物で、耐熱性などに優れ、加工もしやすいため以前から建築材料などとして幅広く使われてきた。しかし、近年アスベストが原因となる健康障害が社会問題となり、アスベストの安全な処理技術が求められている。
 今回開発した技術は、回転だ円型の点集光型赤外線反射鏡とハロゲンランプ(100V・650Wのランプ2個)からなる加熱装置で、集光部を処理する壁などのアスベスト面に一致させ、数秒で1500℃以上に温度を上げることにより、飛散性アスベスト含有材を溶融する。
 研究グループは、典型的なアスベスト材料であるクリソタイルなどの試料について、回転だ円面の反射鏡を持つ新しい加熱装置を使い、大気中で溶融実験を行った。いずれの試料も50V程度の電圧を加えた後、数秒で完全に溶融した。
 また、アスベストを混合した飛散性アスベスト含有材である吹き付け材についても、加熱・溶融できることを明らかにした。さらに、コンクリートの露出を考えてコンクリート表面に直接照射したところ、電圧を上げても高温状態は表面に留まり、ひび割れや破損などの変化は全くなかった。
 同研究所では、現在の装置は実験室内の小規模処理装置だが、今後は大面積を処理できる装置の研究開発を進めるとしている。

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上は、溶融前のアスベスト。下は、5秒間溶融処理後のアスベスト(提供:産業技術総合研究所)