(独)物質・材料研究機構は1月24日、筑波大学やドイツのユーリヒ研究所、スペインのドノスティア物理研究所、ロシアの科学アカデミーと共同でnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)スケールのビスマスの超薄膜の電子状態を走査トンネル顕微鏡を使って初めて測定することに成功したと発表した。
ビスマスは、金属と非金属の中間の性質を持つ「半金属」として知られ、微量の不純物やわずかな磁場を加えると大きな物性変化を示す。このため、「アクロバティック・メタル」とも呼ばれ、最近はナノテクノロジーの観点からビスマスの超微粒子や超薄膜のサイズ・厚さ依存性に注目が集まり、世界中でその研究が進んでいる。
今回の成果は、厚さ7nmのビスマス超薄膜を使って得られたもので、予想に反し強い金属状態であることが分かった。
同機構では、「この研究の意義は、ビスマスが数nm以下の厚みになると表面最外層が金属になっていることをトンネル分光法という手法で直接明らかにした点にある」と位置付けており、ビスマスがスピントロニクス(電子には磁石の性質もあり、電荷と磁石の両方を応用する工学のこと)の材料になるのではと期待している。
No.2008-3
2008年1月21日~2008年1月27日