(独)産業技術総合研究所は8月28日、電子の反粒子である陽電子を照射して材料内部の原子サイズの欠陥分布を非破壊で調べる「陽電子ビームイメージングシステム」の開発に成功したと発表した。表面から1µm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m)程度までの深さにある原子レベルの欠陥分布を3次元画像にすることができる。 半導体、セラミックス、高分子、金属などの先端材料分野では、表面処理や薄膜の形成によって新機能材料やデバイスにする場合が多く、これら材料の開発には、表面近くの局所の極微な欠陥・空隙を計測・評価する必要がある。しかし、原子サイズ、nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)サイズの極微な欠陥分布・空隙の測定は、高分解能の電子顕微鏡を用いても難しく、新たな計測ツールの開発が望まれていた。 今回開発した装置は、他の計測技術では測定が困難だった非晶質材料や高分子でも原子サイズの極微欠陥・空隙の画像化を可能にするもの。電子線形加速器で発生した高強度の短パルス化陽電子ビームを30µm以下に集束し、ビームの照準を3次元的に制御して試料に照射し、物質中の陽電子とポジトロニウム(陽電子と電子のペア)の寿命や散乱粒子などの測定を行う。 物質中の陽電子・ポジトロニウムの寿命は、原子サイズの極微欠陥の有無や空隙サイズなどで変化するので、その寿命を測定すれば、欠陥や空隙を評価することができる。 このため、陽電子ビームを用いた陽電子・ポジトロニウム寿命測定装置が開発されていたが、ビーム径が大きく(5~10mm程度)、微小な試料の測定や局所的な測定は難しかった。 詳しくはこちら |  |
新開発の陽電子ビームイメージングシステム(提供:産業技術総合研究所) |
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