次世代太陽電池の変換効率アップに成功
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は8月29日、次世代太陽電池の変換効率(光を電気に変える光電変換効率)を大幅にアップすることに成功したと発表した。
 「CIGS系太陽電池」と呼ばれる薄膜太陽電池で実現したもので、10cm角の大きさで変換効率15.9%を達成した。
 CIGS系太陽電池は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)を成分とする半導体薄膜でできた太陽電池のこと。開発者の米国ベル研究所が指先に乗る小面積(0.5cm²)の電池で変換効率19.9%を達成しているが、市販されているCIGS太陽電池の変換効率は11~12%程度にとどまっている。
 その壁を破ったもので、産総研は「現在最も普及している多結晶シリコン太陽電池に対しコスト、性能ともに競合できる可能性を示した」と言っている。
 世界の太陽電池生産量は、毎年30%以上の割合で増え続けており、日本でも2030年には国内全電力の約10%を太陽電池が占めることになると見られている。ところが、現在生産されている太陽電池の約9割は結晶シリコン製であるため、シリコン原料が不足し、これが壁になってきている。このため、原料消費が少なく大量生産による低コスト化が期待できる今回のCIGS系をはじめとする薄膜太陽電池が注目され、各メーカーが量産化に着手している。
 産総研は、欠陥が少ない結晶品質の高いCIGS薄膜が得られる「多元蒸着法」と呼ぶ製膜法を使っての3段階蒸着により大面積化と変換効率アップの両立を実現した。
 産総研では、10cm角の基板上に均一な製膜ができたことで「大面積モジュールの量産化にも応用できることが示せた」とし、結晶シリコン太陽電池と同等以上の信頼性を確保して技術移転を図りたいとしている。
 この成果は、9月1日からスペインで開かれた「第23回欧州太陽光発電国際会議」で発表した。

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試作した10cm角のCIGS太陽電池(提供:産業技術総合研究所)