(独)産業技術総合研究所は8月27日、(独)日本学術振興会と共同で次世代の電気自動車やハイブリッド車の電池として有望なリチウムイオン電池の正極(プラス極)材料として、極薄のカーボン膜で覆ったリン酸鉄リチウム超微粒子の合成に成功したと発表した。試験では、1,100回充・放電を行っても性能が落ちず、低コスト化が可能な3価の鉄を使っているので、自動車用リチウムイオン電池の大出力化や低価格化が期待される。
リチウムイオン電池は、蓄電池(二次電池)の一種で、電解質を介してリチウムイオンが充電時には正極から負極(マイナス極)へ、放電時には負極から正極へ移動する。この電池で正極材料は電池の容量を決めるなどの重要な役割を担っているが、現在主に使われているコバルト酸リチウムは資源的に制約のあるコバルトを使うために価格が高く、自動車用の次世代リチウムイオン電池に向けて、大出力で安い正電極材料が求められている。
リン酸鉄リチウムは、その一つとして注目されているが、高速の充・放電で容量が急激に下がってしまう。産総研は、ナノ構造電極材料を利用するとリチウムイオン電池の大出力化が図れるとする報告があることに注目。直径20~40nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)のオリビン(結晶構造の一種)と呼ばれる結晶構造のリン酸鉄リチウムの超微粒子を作製、その表面を厚さ1~2nmの黒鉛に似たカーボン層でコーティングすることで、この問題を克服した。
容量低下の原因が活物質(電子を放出したり取り込んだりする物質)内部のリチウムイオンの拡散の遅さと電子伝導性の低さにあると推定、改善策としてnmオーダーまでの微細化とカーボン被覆に注目して研究開発した成果である。研究者は、この製法をリン酸鉄リチウム以外の材料にも応用して数十nmサイズの微粒子の試作もしており、これらの技術については企業への技術移転や共同研究で実用化を進める計画。
No.2008-33
2008年8月25日~2008年8月31日