(独)産業技術総合研究所は11月21日、(株)デンソーと共同で高温でも使える新しい圧電体を開発したと発表した。
圧電体とは、力を加えると力に比例した分極(表面電荷)が現れる「圧電性」を持った物質のことで、ライターやガスコンロの着火に使われ広く知られるようになった。新圧電体は、窒化アルミニウムにスカンジウムを固溶させた複合窒化物(2種類以上の金属イオンを含む窒化物)の薄膜で、500ºCまで加熱しても結晶構造が変化しないことから、高温下で使う圧電体として期待される。
一般に、物質の圧電性は、耐熱性が高くなるに連れて低下する傾向を示す。このため、耐熱性が高く、しかも高い圧電性を示す圧電体の開発は困難と考えられてきた。
新圧電体は、これまで圧電体としてはほとんど研究されてこなかった複合窒化物圧電体の探索を行い実現したもので、耐熱性に優れ、かつ高い圧電性を示す。さらに、鉛などの有害な元素を含まないため環境にやさしく、既存の半導体製造プロセスが利用でき、量産性にも優れている。
窒化物の研究は、LED(発光ダイオード)や半導体レーザーの分野で、窒化ガリウムを中心とした複合窒化物に関し活発に行われているが、今までに圧電性を示す窒化物は数種類しか報告されていない。
今後は、高温高圧などの過酷環境下での計測に貢献できる新圧電体を使った振動・圧力センサーの開発を目指すとしている。
No.2008-45
2008年11月17日~2008年11月23日