赤外線天文衛星「あかり」の成果を宇宙開発委に報告
:宇宙航空研究開発機構

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月19日、我が国初の本格的赤外線天文観測衛星「あかり」のこれまでの成果をまとめ、同日開かれた宇宙開発委員会に報告した、と発表した。
 「あかり」は、2006年2月22日に「M-V(ミュー5型)ロケット」8号機で打ち上げられ、高度約700kmの太陽同期軌道に乗り、同年5月8日から有効口径68.5cmの反射望遠鏡での本観測を開始。昨年8月26日に液体ヘリウムを使い切ってからは、冷凍機だけの冷却で近赤外線観測を続けている。
 「あかり」の目的は、1983年に米・英・オランダが打ち上げた世界初の赤外線天文観測衛星「IRAS」より1桁以上高い感度、数倍以上高い解像度の全天赤外線観測と特定方向を調べる指向観測を行うこと。この全天サーベイによる天体カタログの初版は既に完成済みで、これには中間赤外線観測による天体が約70万個、遠赤外線によるものが約64,000個載っている。この数は、IRASによる世界初の赤外線天体カタログの約3倍にあたる。
 これらの観測で「あかり」は、オリオン座の一等星「ベテルギウス」が噴出した高速ガスが大規模な星間ガス流とぶつかることで生じた弧状衝撃波(バウ・ショック)を捉えた。「あかり」は、12個の球状星団で極低温の宇宙塵を高感度探査したが、塵は無かった。従来、球状星団には、星の一生の末期に吹き出すガスで作られた宇宙塵が溜まっていると考えられていたのに、何処に消えたのか、新しい課題が生まれたことになる。
 また、「あかり」は、大マゼラン雲中の8個の超新星の残骸から、強い赤外線放射を捉えている。超新星の残骸では、星間物質中の宇宙塵が壊されると考えられていたが、「あかり」は消えたと思われていた比較的小さくて高温の塵が残っていることを始めた検出した。

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