(独)産業技術総合研究所は10月2日、国立国際医療センター、名古屋市立大学と共同で、肝炎ウイルスの感染によって進行していく肝炎の進行度を入院せずに測定できる新検査システムを開発したと発表した。
ウイルス性肝炎は、感染から20~25年程度後に、肝硬変に進展し、肝細胞がんに至ることが知られている。このため、慢性肝炎の診断治療では、持続感染している肝炎ウイルスによって進む肝臓の線維化(硬化)の程度を調べる必要がある。現在そのチェックは、生検検査(バイオプシー検査)といって、外から肝臓に向けて差し込んだ針で肝臓組織の一部を取り出して調べる方法で行われているが、出血などのリスクがあるほか、1週間程度入院しないとならない。
新システムは、慢性肝炎と肝硬変を見分ける機能を持つレクチン(タンパク質の一種)を見つけ実現したもので、ウイルス性肝炎によって生ずる肝臓の線維化の進行度をこれまでのように入院することなく血液検査によって評価できるようにした。
見つけたレクチンは、「AOL」、「MAL」と呼ばれる2種類で、この2つのレクチンを組み合わせ、臨床診断済みの慢性肝炎患者45人と肝硬変患者43人にブラインドテストを実施したところ、正診率(正しく診断される確率)93%という確度の高い肝硬変検出結果が得られた。
同研究所は、「これまで検査入院が必要だったB型やC型肝炎ウイルスに感染した患者の長期にわたる診断や治療、治療後のフォローアップに要する身体的・経済的負担を軽減することができる」と見て、市中病院の臨床検査室で使える検査システムにする開発に既に着手している。
この研究成果は、10月1~3日に横浜市で開かれた「第68回日本癌学会」で発表した。
No.2009-39
2009年9月28日~2009年10月4日