(独)農業・食品産業技術総合研究機構の作物研究所は9月28日、低アミロース米の新しい水稲品種「ミルキーサマー」と「ミルキースター」を開発したと発表した。 低アミロース米とは、米の澱粉の成分の一つであるアミロースの含有率が、一般のうるち米品種より低く数%~15%程度の米で、炊飯米は粘りが強い特徴がある。 現在栽培されている低アミロース米の水稲品種「ミルキークイーン」は、コシヒカリの突然変異(遺伝的変化)により育成された品種で、炊飯した時のご飯の粘りが強く、冷めても硬くならず、食味も良いことから市場で高く評価されており、東北から九州まで全国に産地がある。 しかし、ミルキークイーンと、熟期の異なる低アミロース米の品種がないため、ミルキークイーンと同程度の低アミロース性の極早生と晩生を開発し、産地の拡大を図ることが望まれていた。 新しく開発されたミルキーサマーは、インディカ米の代表的品種「Kasalath(カサラス)」に由来する出穂性遺伝子(稲の出穂を調節する遺伝子)「Hd1」を、「DNA(デオキシリボ核酸)マーカー選抜」という技術を用いてミルキークイーンに導入した品種で、つくばみらい市(茨城)の圃場と沖縄県農業研究センター名護支所で育成された。 一方、ミルキースターは、つくばみらい市の圃場で、耐倒伏性が強く食味が良い「東北168号」と縞葉枯病抵抗性を持つ低アミロース米品種「ミルキープリンセス」との交配により育成された。 ミルキープリンセスは、ミルキークイーン由来の低アミロースの性質を持ち、倒伏に強く、いもち病や縞葉枯れ病に対する抵抗性を改良した品種で、稲麦二毛作(同じ圃場で一年に稲と麦を続けて栽培すること)の多い群馬県や埼玉県などでは産地が形成されている。しかし、ミルキープリンセスは、収量性が不十分であるため、研究グループは晩植で多収の低アミロース米品種の育成を目指した。 同研究所では、ミルキーサマーについては、茨城県の早場米地帯(温暖地)と沖縄県で実用化に向けた試験栽培を続けており、温暖地では早期出荷用の極早生の良食味米として、沖縄では晩生化により多収の良食味の品種として活用が可能であるとしている。 また、ミルキースターは、温暖地の麦作の後に栽培する多収で良食味の品種として、主として北関東など稲麦二毛作地帯での利用が期待されている。 詳しくはこちら |  |
写真中央の白い標識から左が既存の「ミルキークイーン」、右が新開発の「ミルキーサマー」(提供:作物研究所) |
|