(独)産業技術総合研究所は10月1日、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構、(株)島津製作所、京都モノテック(株)、(財)バイオインダストリー協会と共同で、医薬になる抗体の精製時間大幅短縮につながる新システムを開発したと発表した。
人間の体には、体内に異物(抗原)が侵入すると、その抗原に特異的に結びつくタンパク質(抗体)を作って体を守るシステムが備わっている。その抗体をバイオテクノロジーなどで作り出し医薬品化したものを抗体医薬品と呼ぶが、新システムは高品質な抗体医薬品を得るための精製に要する時間の大幅短縮を図ることができる。
抗体の分離・精製には、「アフィニティ・クロマトグラフィー」という方法が使われる。目的とする抗体に特異的かつ可逆的に結合する分子(アフィニティ・リガンド)を詰めたカラムに抗体を含む原料溶液を投入し、目的の抗体だけを吸着させ、その後解離(分離)させて回収する方法で、アフィニティ精製ともいう。しかし、最高に効率が良い最適のアフィニティ・リガンドをライブラリーの中から選別するには、約1,000種類もの総当り実験を行う必要がある。
新システムは、微細な細孔を有する多孔質の厚さ0.1mmのシリカ(酸化ケイ素)製基板に96種類のアフィニティ・リガンドの微小スポットを固定し、それぞれに同一の抗体溶液を反応させて光を照射、抗体と各微小スポットのアフィニティ・リガンドとの反応による減光を受光素子で捉えて、その抗体がどのアフィニティ・リガンドと強く結合するかを同時に測定するという仕組み。数時間で96種類の中から最適のアフィニティ・リガンドを見つけ出すことができる。
これまでの方法では、1種類のアフィニティ・リガンドを調べるのに半日程度かかる。
No.2009-39
2009年9月28日~2009年10月4日